光を捕まえる箱
ジョナサン・クレイザーの
「記憶の刺」Birthを見た。
ジョナサン・クレイザーは、プロモーションビデオやCMで世界的に注目された監督だ。ジャミロクワイの「Virtual Insanity」はその当時、あまりにも鮮烈でジャミロクワイの音楽を増幅させたすばらしいPVでMTVの賞を11部門も受賞した。そして、CMでは、Lievisの「Freedom」 二人の男女が壁を次々にふち破り、さらに木を駆け上がって宇宙に飛び出す話だ。このCMはカンヌで賞を取り、世界中でパクられまくった作品だ。それぼどの影響を映像制作者にインスパイアした作品だ。ミッチェル・ゴンドリーに対抗する映像クリエーター、そんな監督がどんな映画を撮ったのか、楽しみでDVDを見た。

オープニングから、ジョギングする男の後姿からはじまる印象的なはじまりだ。
しかし、このカットが異常に長い、そして意味が分からない。男はトンネルに入り、突然倒れる。たぶん、死んだのだ。そして「10years later」
男の墓をお参りするニコール・キッドマン。しかし、ベリーショートで最初、ニコール・キッドマンと気づかない、しばらく見て、えっ、もしかしてニコール・キッドマンか!と、気がつく。いっさいの説明的描写を排除して、とても静かに進行する、ニコールのセリフでさえとても小さい。
オープニングでジョギングをしていた男は、ニコールの夫で彼が死んで10年目にやっとその傷も癒えた彼女は、再婚を決意する。舞台は冬のニューヨーク。
やっと幸せな暮らしをはじめようとした矢先に彼女の前にこつ然と、死んだはずの男を名乗る10才の少年が現れる。
「ぼくだ、ショーンだよ。君の夫の、、、」当然、悪ふざけだと最初はとりわないニコールだが、彼は自分との二人だけしか知らないセックスのことまでこと細かに語りはじめる。
しだいに彼女の気持ちは揺らぎ始め、彼女のフィアンセ、家族をも巻き込んで話は進行していく。
ジョナサン・クレイザーは、この映画に彼の得意なギミックや特殊効果をいっさい使わず、ニコール・キッドマンをはじめとする役者の抑制の効いたリアルな演技で主人公の女性心理の中へ入っていく。そして、冒頭の異常に長いジョギングをする男の映像が、しだいにこの映画全体に重くのしかかってくる。
ニコール・キッドマンの夫だと主張する少年役のキャメロン・ブライトの演技が子役とは思えない格調のある演技で、ニコール・キッドマンの演技を受けとめる。
この映画をジョナサン・クレイザーは単なるミステリーとして描くのではなく、
死んだ最愛の夫との恋愛映画として捉えていたのではないだろうか。
ネタバレになるが、
少年を通して死んだ夫との恋愛の続きを望む妻と、妻への想いからこの世に戻ってきた夫の想いが少年に乗り移って、少年と妻は恋を成就させようとする。しかし、夫の愛人の登場で、自分でも忘れていた妻への裏切りに気がついて、妻のもとを離れたのでは、ないか。
ジョナサン・クレイザーは、さまざまな謎を残してこの映画を終わる。
彩度を落として深い映像はニコール・キッドマンの演技とともに心に刺さり、いろいろな解釈のひろがる心に残る作品となった。
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